秘密意匠とは


秘密意匠とは、意匠登録出願人が、意匠権の設定の登録の日から3年以内 の期間を指定して、その期間その内容を秘密にする意匠をいいます。

我が国の意匠制度では、意匠権という独占権を意匠権者に与える代償として、意匠の設定の登録があったときは、その内容を意匠公報に掲載し、広くそのデザインを公表してデザインの累積的進歩を図り、産業の発展を促進するようにしています。

しかし、意匠は物品の外観であるため極めて模倣されやすく、出願意匠の販売前に、その意匠か公表されると、模倣品が先に売り出されて、出願人が不利益を被るおそれがあります。

また、意匠は流行に左右されやすく短期間でその存在価値を失ってしまものが多いため、出願人にとっては、内容を公表しないで先願の権利を確保することができれば、メリットが大きいです。

さらに、シリーズ物など計画的なデザイン活動が行われる分野では、先願の権利を確保し、そのデザイン傾向を同業他社に察知されないようにしたい場合も多くあります。

そこで、わが国の意匠制度では、意匠の実施時期と公表時期との調和を図り、出願人と第三者の利益を調整する秘密意匠制度が採用されています。


秘密意匠の請求


秘密請求できる期間


秘密にすることができる期間は、意匠権の設定の日から3年以内です。
この期間は、3年を超えない範囲で延長・短縮が可能です。


秘密請求の手続き


意匠登録出願と同時又は第1年分の登録料の納付と同時に、所定の書面を特許庁長官に提出します。

■添付図面その他の物件を密封し、「秘密意匠」と朱書きします。

■出願手数料とは別に、手数料を納付する必要があります。


秘密請求の効果


秘密の保持


通常の意匠公報には、書誌的事項のみが公表され、願書及び添付図面等については、秘密期間の経過後遅滞なく公表されます。

秘密意匠に関する書類の閲覧は、原則として禁止れます。

秘密意匠の例外的開示


秘密意匠は、常に秘密とされるわけではなく、次の場合には、例外的に意匠権者以外の者に開示されます。

■意匠権者の承諾を得たとき
■その意匠又はその意匠と同一若しくは類似の意匠に関する審査、審判、再審又は訴訟の当事者又は参加人から請求があつたとき
■ 裁判所から請求があつたとき。
■ 利害関係人が意匠権者の氏名又は名称及び登録番号を記載した書面その他経済産業省令で定める書面を特許庁長官に提出して請求したとき。

権利行使の制約


秘密意匠の内容は一般には公表されていませんので、差止請求権を行使する場合は、特許庁長官の証明を受けた書面を提示して行う必要があります。

また、損害賠償の請求に際しては、通常の意匠権と違い、過失の推定がされません。従って、民法の一般原則に戻って、意匠権者側が侵害者の過失を立証する必要があります。


参考条文


(秘密意匠)
第十四条 意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。

2 前項の規定による請求をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した書面を意匠登録出願と同時に、又は第四十二条第一項の規定による第一年分の登録料の納付と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 秘密にすることを請求する期間

3 意匠登録出願人又は意匠権者は、第一項の規定により秘密にすることを請求した期間を延長し又は短縮することを請求することができる。

4 特許庁長官は、次の各号の一に該当するときは、第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠を意匠権者以外の者に示さなければならない。
一 意匠権者の承諾を得たとき。
二 その意匠又はその意匠と同一若しくは類似の意匠に関する審査、審判、再審又は訴訟の当事者又は参加人から請求があつたとき。
三 裁判所から請求があつたとき。
四 利害関係人が意匠権者の氏名又は名称及び登録番号を記載した書面その他経済産業省令で定める書面を特許庁長官に提出して請求したとき。


(意匠権の設定の登録)
第二十条 意匠権は、設定の登録により発生する。

2 第四十二条第一項第一号の規定による第一年分の登録料の納付があつたときは、意匠権の設定の登録をする。

3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を意匠公報に掲載しなければならない。
一 意匠権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 意匠登録出願の番号及び年月日
三 登録番号及び設定の登録の年月日
四 願書及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容
五 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

4 第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に関する前項第四号に掲げる事項は、同項の規定にかかわらず、第十四条第一項の規定により指定した期間の経過後遅滞なく掲載するものとする。


(差止請求権)
第三十七条 意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(プログラム等(特許法第二条第四項に規定するプログラム等をいう。次条において同じ。)を含む。以下同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

3 第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第一項の規定による請求をすることができない。

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