商標出願の区分、商品や役務(サービス)の指定とは

商品や役務(サービス)指定の概要

商標権は、「商標(マーク)」と、その「商標」を使用する商品やサービスとの組合せで構成されます。つまり、「商標(マーク)」だけでなく、その「商標」を使用する商品やサービスと一体となって権利範囲が決まります。

そのため、特許庁に商標登録出願する際には、「商標(マーク)」とともに、その「商標(マーク)」を使用する「商品」又は「サービス」を指定する必要があります。

商標法では、サービスのことを「役務(えきむ)」といい、指定した商品を「指定商品」、指定した役務を「指定役務」といいます。

また、指定商品・役務を記載する際には、あわせて「区分」も記載する必要があります。「区分」とは、商品やサービスを一定の基準によってカテゴリー分けしたものです。
この「区分」数に応じて出願費用や登録費用が変りますので注意が必要です。

商標権は商標(マーク)と指定商品又は指定役務によりその権利範囲が定まりますので、指定商品や指定役務を特定することは商標(マーク)を決めるのと同様に非常に重要になります。従って、指定商品や指定役務をどのようにすべきか、商標を専門にしている弁理士にご相談されることをお勧めします。以下では、弁理士にご相談されるに際して、知っておくべき基本的な区分や指定商品や指定役務についての基本的な知識を説明します。

区分と商品・役務の指定

区分とは商品やサービスを一定の基準によってカテゴリー分けをしたものです。現在、日本では、国際分類が採用されています。これは商品については、1類から34類まで、サービスについては35類から45類にカテゴリー分け(区分)されており、商標施行令別表に記載されています。

例えば、第一類には「工業用、科学用又は農業用の化学品」が分類されています。

商標施行令別表(政令別表)

第一類 工業用、科学用又は農業用の化学品
第二類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品
第三類 洗浄剤及び化粧品
第四類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤
第五類 薬剤
第六類 卑金属及びその製品
第七類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械
第八類 手動工具
第九類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具
第十類 医療用機械器具及び医療用品
第十一類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置
第十二類 乗物その他移動用の装置
第十三類 火器及び火工品
第十四類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計
第十五類 楽器
第十六類 紙、紙製品及び事務用品
第十七類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック
第十八類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具
第十九類 金属製でない建築材料
第二十類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの
第二十一類 家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品
第二十二類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維
第二十三類 織物用の糸
第二十四類 織物及び家庭用の織物製カバー
第二十五類 被服及び履物
第二十六類 裁縫用品
第二十七類 床敷物及び織物製でない壁掛け
第二十八類 がん具、遊戯用具及び運動用具
第二十九類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物
第三十類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料
第三十一類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料
第三十二類 アルコールを含有しない飲料及びビール
第三十三類 ビールを除くアルコール飲料
第三十四類 たばこ、喫煙用具及びマッチ
第三十五類 広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
第三十六類 金融、保険及び不動産の取引
第三十七類 建設、設置工事及び修理
第三十八類 電気通信
第三十九類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配
第四十類 物品の加工その他の処理
第四十一類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動
第四十二類 科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発
第四十三類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供
第四十四類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務
第四十五類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務

この「区分」では大まかすぎますので、これを細目に展開したものが「商標施行規則別表」に記載されています。

例えば、第一類は「工業用、科学用又は農業用の化学品」ですが、次のように「商品」が細分化されています。

商標施行規則別表

更に、特許庁では出願された商標を登録してもよいか審査するために、商品やサービスの類似関係も含めた基準「類似商品・役務審査基準」を定めています。

例えば、
第一類は「工業用、科学用又は農業用の化学品」ですが、次のように細分化されています。

類似商品・役務審査基準

実務では、この類似商品・役務審査基準」を用いて使用する商品(指定商品)やサービス(指定役務)を特定します。

商標権は商標(マーク)と指定商品・役務で構成され、その効力は類似範囲まで及ぶ強力なものです。

したがって、商標登録の審査では、商標権が重複しないように、先行商標に出願商標と類似する商標があるかどうかが審査されます。①商標(マーク)が類似するか、②指定商品・指定役務が類似するかが判断されます。①の商標(マーク)が同一または類似していても②の指定商品・役務が同一または類似していなければ、その出願商標は先行商標に類似しないものと扱われます。

このため、「類似商品・役務審査基準」では②の指定商品・役務の類似判断が容易に行えるように類似群コード(化学品は01A01)が付られています。類似群コードが同じ指定商品・役務は類似するものと推定されます。

例えば、商標を使用する商品が「硫酸、アンモニア水等」であれば
 区分は【第1類】とします。
 指定商品・指定役務は【指定商品(指定役務)】化学品と指定します。
個別商品(硫酸、アンモニア水等)を直接指定してもよいのですが、審査は基本的に類似群コード単位ごとになされますので、「化学品」と記載することでその下に記載されている個別商品全部を指定したことになり、より広い範囲の権利を指定することができます。

この時、使用する商品が特殊なもので、「化学品」の範疇に入ると思われるけれども個別商品名リストに記載がない場合は、「〇〇、その他化学品」などと〇〇にその商品名を具体的に特定できるように記載(積極表示)して表現することで、後々の権利範囲に疑義が生じることなく、また漏れが生じなくて望ましいとされます。

このように指定商品・役務は商標施行令別表(政令別表)で使用する区分を概略特定し「類似商品・役務審査基準」で具体的内容を検討して記載します。


また、商品やサービスを個別的に記載する場合は、商品やサービスなどのキーワードから、特許情報プラットフォームJ-PlatPatで簡単に調べることもできます

商品・役務名からの検索(J-PlatPat)

特許情報プラットフォームJ-PlatPatの「商標」→「6.商品・役務名検索」を指定しますと次の画面になります。

これに、「硫酸」であれば商品・役務名に「硫酸」を指定し、「検索」を実行すると「硫酸」に関係する商品・役務のリストが表示されます。

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