外国に商標出願を一元的に行う制度として、マドリッド協定議定書(以下、「マドプロ」という。)による国際出願制度(マドリッド制度)があります。マドプロ出願は締約国の中から 権利を取得したい国(指定国)を指定することにより、複数国に同時に出願するのと同等の効果 を得ることができるという制度です 。
マドプロ出願では、従来の各国別 の出願制度に比べ、簡単な手続でスピーディーに世界各国で商標の保護を求めることができ、 また経費の節約や手続の一括化など、多くのメリットがあります。
直接出願とマドプロ出願(マドリッド制度)の手続比較
下図は直接出願とマドプロ出願を比較したものです
マドプロ出願の流れは以下のようになります。
(1)日本の特許庁に商標出願をした出願人又は商標登録がされている名義人が、その出願又は登録を基礎(基礎商標)に、保護を求める締約国(指定国)を指定し、定められた1つの様式で、英語で願書(MM2)を書いて、日本の特許庁(JPO)を通じて、世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局 に、国際出願を行います。
(2)国際事務局は、国際出願の願書の記載が適正か否か等の方式審査を行い、適正であれば、国際登録簿に登録し、保護を求める指定国へ領域指定されている旨の通報(指定通報)を発します。
(3)指定通報を受けた指定国 の官庁(指定国官庁)は、その出願が自国の法令等に照らして保護できるかを審査し、その出願を拒絶する場合はその旨の通知を一定期間(1年又は各国の宣言 により18ヶ月)内に国際事務局に行う必要があります。拒絶通知が行われない場合、国際登録日から、当該官庁による登録を受けていたならば与えられたであろう保護と同一の保護が与えられることになります。
マドプロ出願の条件
マドプロ出願を行う場合には、次の条件を満たしていることが必要となります。
■ 日本の特許庁に既に商標出願または 商標登録がされていること
■ 商標(マーク)が同一であること
■ 指定する商品及び役務(サービス)が同一又はその指定範囲内であること
■ 出願人又は名義人が同一であること
マドプロ出願のメリット
マドプロ出願のメリットとしては、次のものがあります。
■一の手続きで各締約国への出願が可能
■手続きの一本化による経費節減
■各国ごとの言語によらず一の言語で手続可能
■国際登録簿により複数の国における権利を一元管理可能
■ 事後指定による登録後の権利の拡張
事後指定
事後指定とは、国際登録出願が国際登録された後に、指定国や指定商品・役務(サービス)を追加する制度です。ただし、指定商品・役務(サービス)は国際登録簿上の商品や役務の範囲内でする必要があります。
各指定国では、事後指定の日にその国に直接出願した場合と同等の効果が発生し、国際出願時と同様に、国際事務局が指定国に事後指定を通報した日から1年(又は18月)以内にその指定国が拒絶の通報を行わない場合は、その指定国の国内登録と同一の保護を受けることができます。
セントラルアタック
セントラルアタックとは、国際登録が、国際登録日から5年間は、国際登録の基礎となった出願・登録(基礎商標)に従属(影響を受ける)することをいいま す。
その基礎商標が、 国際登録日から5年の期間が満了する前に拒絶、放棄、無効等となった場合など基礎出願・登録の効果が終了すると、その範囲内で 国際登録された指定商品や役務の全部又は一部について国際登録が取り消されます。その 結果として指定国における国際登録の効果も取消しに係る範囲内で失効します。
国際登録は、当該国際登録日から5年の期間が満了したときは、基礎出願による登録又は基礎登録から独立した標章登録となります。
指定国から拒絶通知があった場合
指定国から拒絶通知があった場合、現地に営業所があればその営業所での対応も可能ですが、一般的には現地代理人による対応が必要となり、コストが掛かることになります。
従って、国際出願をする際には、出願すべき国の商標制度を理解して、十分検討した上で出願する必要があります。
国際登録の存続期間
国際事務局による標章の登録は、国際登録日から10年間にわたって効力を有し、従い更新することができます。
更新の手続も国際登録出願と同様に、1回の更新申請で各指定締約国に反映 させることができます
マドリッド議定書締約国
マドリッド協定議定書の締約国は、特許庁の「マドリッド協定議定書締約国一覧 (外部リンク)」をご覧ください。
また、締約国の詳しい情報については、国際事務局(WIPO)の「Madrid Member Profiles」(外部リンク)をご覧ください。
なお、 「欧州連合知的財産庁(EUIPO)」 も指定国として指定することができます。